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パートナー営業の極意―「看板を借りる」戦略で大手企業の壁を突破する新常識

パートナー営業の極意―「看板を借りる」戦略で大手企業の壁を突破する新常識

BtoB、特にエンタープライズ領域の営業において、「パートナー企業との連携」は成功の鍵を握る重要な要素です。しかし、多くのパートナー営業担当者が「自社の知名度では、大手企業をクライアントに持つパートナーとの関係構築が難しい」「提案の機会さえ得られない」といった共通の課題に直面しています。

本記事では、こうした課題を乗り越えるための新しいアプローチとして、大手企業の「看板(=信頼)」を戦略的に借り、その“生態系”の中で成果を最大化する『生態系ハック』とも呼べるパートナー営業戦略を解説します。これは、単なる営業手法ではなく、事業成長を加速させるための新しい思想です。

この記事を読むことで、あなたは以下のことを学べます:

  • 従来の営業アプローチが大手企業に通用しない根本的な理由
  • パートナー営業の価値を最大化する「生態系ハック」の具体的な3ステップ
  • 従来の「営業代行」と、我々が提唱する「パートナー営業」の決定的な違い

目次[非表示]

  1. 1.なぜ従来の営業アプローチは大手企業に通用しないのか?
  2. 2.パートナー営業の新解釈:「生態系ハック」という思考法
    1. 2.1.自社の価値を再定義する ―「機能提供」から「触媒」へ
    2. 2.2.パートナーシップの質的転換 ― BPaaS(Business Process as a Service)としての営業支援
  3. 3.実践!「看板を借りる」パートナー営業の3ステップ
    1. 3.1.Step 1: 理想的な大手パートナーの見極め方
    2. 3.2.Step 2: WIN-WINを超える「三方良し」の提案構造を設計する
    3. 3.3.Step 3: 「支援者」として交渉のテーブルにつく実践テクニック
  4. 4.「パートナー営業」と「営業代行」の決定的な違い
  5. 5.まとめ:未来の営業は「共創」から生まれる
  6. 6.よくある質問(FAQ)

なぜ従来の営業アプローチは大手企業に通用しないのか?

結論から言えば、大手企業は取引において**「不確実性(リスク)」を極端に嫌う**からです。あなたの会社のサービスがどれだけ革新的であっても、彼らにとっては「未知の企業との取引」そのものがリスクと判断されがちです。

多くの企業が突破できずにいる「大手企業の壁」の正体は、主に以下の3つの要素で構成されています。

  1. 取引実績の壁: 大手企業は、同規模の企業との取引実績を重視します。これは、安定した業務遂行能力やコンプライアンス体制が担保されていると考えるためです。
  2. 信用の壁: 財務基盤やブランド認知度が、そのまま企業の信用力として評価されます。残念ながら、サービス内容を吟味する以前に、企業情報だけでフィルタリングされるケースは少なくありません。
  3. 関係性の壁: 多くの大手企業には、長年の付き合いがある既存のベンダーや代理店が存在します。この強固な関係性の中に新規参入するのは、極めて困難です。

BtoBの購買担当者は、購買プロセスのかなりの部分を営業担当者と接触する前に終えているとされています。これは、彼らがオンラインで情報を収集し、信頼できると判断した企業にしか接触しない傾向が強まっていることを意味します。

パートナー営業の新解釈:「生態系ハック」という思考法

この強固な壁を正面から突破するのが困難である以上、私たちは思考を転換する必要があります。それが、**自社単独で戦うのではなく、すでに壁の内側にいる大手企業とパートナーシップを組み、その「信頼」と「リソース」を借りて戦う『生態系ハック』**です。

これは、他社の力を借りるだけの単純な話ではありません。自社の提供価値を再定義し、パートナーシップの質を向上させることから始まります。

自社の価値を再定義する ―「機能提供」から「触媒」へ

まず、自社の役割を「特定のサービスを提供するプレイヤー」から**「複数の企業のリソースを繋ぎ、新たな化学反応を起こす“触媒(カタリスト)”」**へと再定義します。

特定の自社プロダクトを持たない、あるいはそれに固執しない柔軟性こそが、我々のような営業支援会社の最大の強みです。クライアントが持つ無形資産(ブランド、顧客基盤)や課題を客観的に分析し、外部のノウハウやネットワークと掛け合わせることで、彼ら自身も気づいていない新たな価値を創造する。この「触媒」としての立ち位置が、大手パートナーにとって不可欠な存在となる第一歩です。

パートナーシップの質的転換 ― BPaaS(Business Process as a Service)としての営業支援

この「触媒」としての役割を事業モデルに落とし込んだのが、**BPaaS(Business Process as a Service)**という考え方です。

  • 専門用語の定義:
    • BPO (Business Process Outsourcing): 企業の業務プロセスの一部を、外部の専門企業に委託すること。主にコスト削減や業務効率化を目的とします。
    • BPaaS (Business Process as a Service): BPOにテクノロジー(SaaSなど)を組み合わせ、業務プロセスそのものをサービスとして提供するモデル。単なる業務代行に留まらず、プロセスの最適化や成果の最大化までを目指します。

従来のパートナー営業が、紹介や単純な業務委託(BPO)に留まっていたとすれば、私たちが目指すのはBPaaSとしての営業支援です。パートナーの営業プロセスに我々の専門知識と実行力を組み込み、プロセス全体を最適化し、最終的な「成果」を共に創り上げていきます。

実践!「看板を借りる」パートナー営業の3ステップ

では、具体的にどのように「生態系ハック」を実践するのか。私たちが数々の営業支援プロジェクトで培った経験から、その核心となる3つのステップを解説します。

Step 1: 理想的な大手パートナーの見極め方

成功の8割は、パートナー選びで決まると言っても過言ではありません。以下の3つの視点から、自社にとって理想的なパートナー候補を見極めます。

  • 事業的な補完性: パートナーが持つ強み(例:顧客基盤、ブランド力)と、自社が持つ強み(例:機動力、企画力、専門性)が、明確な補完関係にあるか。
  • 課題の明確性: パートナーが「自社だけでは解決できない明確な課題(例:新規開拓の遅れ、クロスセルの不振)」を抱えているか。
  • 文化的な親和性: 新しい挑戦を許容し、外部の知見を積極的に取り入れようとする文化があるか。

Step 2: WIN-WINを超える「三方良し」の提案構造を設計する

パートナーシップの提案において、「WIN-WIN(自社とパートナーの双方に利益がある)」は最低条件です。真に強固な関係を築くには、その先にいるエンドクライアントを含めた「三方良し」の構造を設計する必要があります。

  1. パートナーのWIN: 新規事業の創出、既存顧客への提供価値向上、課題の解決。
  2. 自社のWIN: 大手企業の看板による信用の獲得、新たな市場へのアクセス、成功報酬。
  3. エンドクライアントのWIN: これまでアクセスできなかった革新的なソリューションの享受、課題の根本的な解決。

この3つのWINを明確に言語化し、提案書に落とし込むことが極めて重要です。

Step 3: 「支援者」として交渉のテーブルにつく実践テクニック

パートナーとの合意が取れたら、いよいよエンドクライアントへのアプローチです。ここでの立ち振る舞いが、成否を分けます。

  • 名刺交換の順番: まずパートナー企業の担当者が挨拶と名刺交換を行い、その後に「本日のプロジェクトを支援するパートナーの〇〇です」と紹介してもらう形で名刺交換を行います。
  • 発言のポジショニング: 自らが主役として話すのではなく、あくまでパートナー企業の発言を補足し、専門的な見地から解説する「支援者」「専門家」の役に徹します。
  • 一体感の演出: 商談中はパートナー企業の担当者と頻繁に目線を合わせ、あたかも同じ会社のチームであるかのような一体感を演出します。

この「支援者」という立ち位置を取ることで、クライアントの警戒心を解き、提案内容に集中してもらうことが可能になります。

「パートナー営業」と「営業代行」の決定的な違い

ここで、「それは従来の営業代行やセールスパートナー制度と何が違うのか?」という疑問が浮かぶかもしれません。両者は似て非なるものであり、その違いは提供価値の本質にあります。

比較項目

営業代行(BPOモデル)

パートナー営業(BPaaSモデル)

① 主な目的

アポイント獲得や商談などの業務量(リソース)の補完

パートナーとの協業による事業成果(売上・利益)の創出

② 関係性

発注者と受注者という上下関係

共通のゴールを目指す対等なパートナー

③ 契約期間

短期的なプロジェクトベースが多い

中長期的な関係構築が前提

④ 報酬体系

固定費やコール単価など、活動量に応じた報酬が中心

レベニューシェアなど、成果に応じた報酬が多い

⑤ 提供価値

「労働力」の提供

「戦略・知恵・実行力」の提供

まとめ:未来の営業は「共創」から生まれる

本記事で解説した「看板を借りる」パートナー営業戦略は、単なるテクニックではありません。それは、**「自社だけで戦う」という古い常識から脱却し、他社と強みを掛け合わせ、新たな価値を『共創』していく」**という、これからの時代に不可欠な思想です。

企業の規模や知名度は、もはや絶対的なハンディキャップではありません。戦略的な思考と実行力さえあれば、市場の“生態系”を味方につけ、ビジネスを飛躍的に成長させることが可能です。

もし、あなたが現在の営業活動に限界を感じているなら、まずは「どの企業の看板を借りたいか?」そして「その企業に、自分は何を提供できるか?」を考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q1. この「看板を借りる」戦略は、どのような業種・規模の企業に最も効果的ですか?

A1. 特に、優れた専門技術や革新的なサービスを持ちながらも、ブランド認知度や販売チャネルに課題を抱える中小・スタートアップ企業に非常に効果的です。また、アプローチしたい業界に強固なネットワークを持つ企業とパートナーシップを組むことで、業界を問わず応用が可能です。

Q2. 信頼できる大手パートナーを見つけるための、具体的なアクションプランを教えてください。

A2. 以下の3つのアクションをお勧めします。

  1. 展示会や業界イベントへの参加: パートナー候補となる企業のキーパーソンと直接出会える絶好の機会です。
  2. 自社の既存顧客からの紹介: すでに信頼関係のある顧客に、その取引先などを紹介してもらうのは有効な手段です。
  3. 専門のビジネスマッチングサービスや営業支援会社の活用: 我々のような専門企業は、独自のネットワークを活用して最適なパートナー候補をご紹介できます。

Q3. 「パートナー営業」と従来の「営業代行」や「セールスパートナー」制度との本質的な違いは何ですか?

A3. 本質的な違いは、**「事業成果へのコミットメントの深さ」**にあります。営業代行や従来のセールスパートナー制度が、アポイント獲得や紹介といった「活動量」を指標とすることが多いのに対し、我々が提唱するパートナー営業は、パートナーの事業そのものに入り込み、「売上・利益」といった最終的な事業成果(ゴール)を共有し、共に創り上げることを目指す点にあります。

皆川 祐輝
皆川 祐輝
株式会社BeFree代表 学生時代から個人事業主として活躍し、多くの経験値を積みながら視野を広げる。 卒業後は大手建設会社に就職し、その後独立し、株式会社BeFreeを創業。 現在は、営業支援や転職支援、飲食業、代理店業など幅広い事業を展開している。

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